「展示会」と「ウェビナー」を徹底解説!それぞれのメリットと効果を高めるポイントは?

【Index】

◆展示会

・メリットは「リード獲得効率が高いこと」、デメリットは「工数がかかること」
・導入・成功事例は、最強のフック
・その展示会で、本当に合っていますか?
・展示会の効果を最大化するTIP

◆ウェビナー

・他の施策との組み合わせがより重要に
・プロダクトセミナーの精度向上が最優先
・何より「ユニーク情報」が重要
・アンケートでは「ネクストアクション」を聞き洩らさない

 

◆展示会

メリットは「リード獲得効率が高いこと」、デメリットは「工数がかかること」

― マーケティングには実に多様な打ち手があり、何から手をつけるべきか迷う企業・担当者が少なくありません。他の施策と比較した際の、展示会のメリット/デメリットを教えてください。

デメリットは、シンプルに「人手がいる」ことです。
定められた開催期間中に“最大瞬間風速”を出さなければいけないので、その分の工数がかかります。営業やマーケティング部門のリソースはもちろん、場合によってはCSなどの部門のリソースを引っ張ってくる必要もあります。それゆえ、展示会期間中は他の多くの施策がストップしてしまう可能性があるのです。

メリットもシンプルで、「ターゲットが目の前まで歩いてきてくれる」ことです。
自社の商品・サービスと展示会のテーマが合致していれば、予めターゲティングされた人たちが次々と目の前を歩いてくれるので、とても効率が良いです。

― 最大瞬間風速を出すための「人員確保」が、展示会出展を成功させるためのポイントの一つと言えそうですね。

展示会に必要な人員は、次のようなシミュレーションで割り出すことができます。
名刺獲得数や当日商談数、本商談予約数などの目標から逆算して、人員計画を立てます。

「当日商談」は展示会当日にブース内で行う商談を、「本商談」は会期後により詳細な説明やヒアリングを行う商談を指します。

このシミュレーションを行わないと、展示会直前になって「人手が足りない!」ということになりかねません。
アサインしたはずの営業担当者に、念のため予定を確認したら「通常の営業があるので無理です!」と言われたり、当日まで来れると言っていたのに「大型商談が入ったので行けなくなりました!」と言われたり…といったことは、残念ながら珍しくありません。

単に当日の予定を押さえるだけでなく、各メンバーの1日の動きまで考え、共有しておくのも重要です。そうしないと、実は本人たちは会場内で手が空いたら、通常業務をやる気満々だったりしますから。キャッチや操作説明など、当日はやるべきことがいっぱいあるので、手が空いたら展示会の業務をしてくれと(笑)

― 展示会出展を前向きに検討すべき企業には、業種などの属性、事業の状況など、特徴はあるのでしょうか?

コロナ禍の影響で、多くの企業が顧客へのアプローチの場を「オンライン」に移行しました。しかし、やはりオンラインだけでは売れない商材はあるものです。工場の製造機器などの大型機械・装置はその代表例ですね。
そうした商材を扱う企業の多くは「オフライン」の展示会に戻ってきています。

オンラインだけでは売れない商材、つまり「単価が高い商材」「検討期間が長い商材」「実物を見ないと良し悪しを判断しづらい商材」を扱っている企業は、展示会に向いている。むしろ、展示会に出ないと売れないと言っても過言ではありません。

一方、僕の前職であるBtoBマーケティング支援サービス「ferret One」のように、オンラインだけで売ることができるサービスでも、展示会に積極的に出展するケースがあります。
目的はリード獲得です。東京、大阪、名古屋……各地の展示会に出展することで、幅広いエリアのリードが獲得できます。

この場合の出展の条件は、「後工程」の仕組みが整っていることです。獲得した名刺をMAツールに登録・一元管理して、継続的なフォローを行い、適切なタイミングでインサイドセールスがコールし、スピーディに商談につなげていく。
このように、リードという“ガソリン”さえ入れれば仕組みが回っていく状態の企業は、展示会出展に向いていると言えます。

会期中に大量の名刺を獲得したものの、後工程が確立されておらず、膨大なリストを前に「とりあえずお礼メールでも送っておこうか…」といった状況にある企業は、展示会を上手く活用できないと思います。

 

導入・成功事例は、最強のフック

― 河村さんが、展示会活用が秀逸だと思う企業の事例を教えてください。

まずは、アプリプラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリです。同社は、展示会出展に力を入れている企業の一つです。

特に秀逸なのは、ターゲット企業をセグメントし、業種・業態ごとに「導入事例」を取り揃えていることです。両面印刷・ペライチ(一枚もの)の資料を、通路からよく見える位置に置かれたストッカーにズラリと収められています。

来場者は、同業他社の事例資料を見つけて自由に閲覧することができます。そこへすかさず営業担当者が歩み寄り、「この事例、もっと詳しくご覧になりませんか」と声をかけ、名刺交換や商談予約につなげていきます。

来場者が一番知りたいのは、ヤプリのアプリ開発システムそのものではなく、そのシステムを活用した同業他社が「どのような成果を得たのか?」ということ。来場者にとって最も興味のある情報をブース最前面に置き、フックとして機能させている点が秀逸で、僕も大いに真似させてもらっています(笑)

オンライン会議システムを提供するベルフェイスも、事例の見せ方が秀逸です。 様々な業種・業態の事例を、資料ではなくブース壁面に印刷していました。導入企業の担当者の方のコメントや顔写真がズラリと並ぶ様子は圧巻です。

サービスを活用して作ったアウトプットを見せるのも効果的です。

例えばferret Oneでは、ロゴや社名に加えて、お客様がferret Oneで構築したWebサイトのキャプチャ画像をブース壁面に印刷していました。通りすがりの来場者の目にも入りやすく、「こういうものが作れるんだな」と端的にイメージしてもらうことができるので、非常に効果的だったと思います。

ところで、来場者にとっては、同業他社の導入実績もさることながら、自社の別部門・別事業部、関連会社の導入実績も非常に重要な情報と言えます。

規模の大きい企業ほど、過去に取引実績のない企業のサービスを導入するハードルが高く、すでに取引のある企業が選ばれやすい傾向があります。その割に、組織が縦割りになっており、隣の事業部がどんなサービスを導入しているのか正確に把握していないケースがよくあります。

そのため、展示会で自社の別部門・別事業部、関連会社の導入実績があるとわかると、「それならうちの部署も」と話が進んでいくことが珍しくないのです。

このように大企業ほど、部門ごと・事業部ごとの縦割り組織になっていて、情報共有がなされていないことが多いもの。展示会に来て、隣りの事業部が導入していると知ったことで、導入に前向きになってくださるケースは少なくありません。

― 商品・サービスの特性上、事例を公開するのが難しかったり、まだ実績自体が少なかったりする場合は、どうすればいいでしょうか?

詳細な事例を公開するのが難しくとも、最低限「ロゴ」「社名」は掲載許可を取っておきたいところです。ブースの壁面に導入企業のロゴを並べて「導入実績500社!」のように表記しているブースをよく見かけるでしょう。その中に同業他社のロゴを見つけると、それだけでやはり気になるものですから。

もし、ブース壁面やパンフレット、チラシにロゴ・社名を出すのがNGでも、最低限できることとして「口頭説明の中で社名を出す」許可を取っておくのをお勧めします。
例えばコンサルティング会社の人がブースに来たときに、「コンサルティング業界だと、〇〇社に使っていただいています」と言える状態をつくっておくというわけです。
許可を取った企業はリストアップし、どの業種の来場者にどの社名を出すか、営業担当者の間で認識を揃えておきましょう。

ブース壁面やパンフレット、チラシに事例、ロゴ・社名を載せておくことのメリットの一つに、「アルバイトスタッフの方のコミュニケーションレベルを高められる」というのが挙げられます。

自社の商品・サービスを活用して、どんな業種のどんな企業が成功しているか。こうした情報は、社員であればもちろん認識・記憶しているでしょう。しかし、アルバイトスタッフはよほどの有名企業でもない限り、展示会当日に初めてその企業のサービスを知るケースがほとんどで、来場者に合わせた導入事例を提示するのは至難の業と言えます。

そこで事例やロゴ・社名を掲出しておけば、「当社はこんな企業に導入いただいているんです」といった曖昧な説明でも、ブース壁面や事例資料入りのストッカーの前に誘導できれば、あとは来場者が自主的に、興味のある業種・企業を見つけてくれるのです。結果として、アルバイトスタッフの方の学習コストが大幅に削減できます。

 

その展示会で、本当に合っていますか?

― 「展示会で、思うような成果が出ない」と相談されたら、河村さんはどのように改善策を見出していきますか?

まず、「出展するのは、その展示会で合っていますか?」と聞くことから始めます。
出展社数や来場人数が多かったり、知名度が高かったりする展示会を何となく選んでいる企業が結構多いのですが、「自社に合った展示会に出ること」以上に重要なことはありません。なぜなら、展示会の来場者の属性は出展社側で変えることができないからです。

ブースのデザインや配布物について考えるよりずっと手前、まずはその展示会の来場者が自社のペルソナと合致しているかを確認しましょう

僕が出展を検討する際には、その展示会の過去の出展企業を調べ上げ、「知人の企業」が出展しているかを最初に確認します。そして出展実績のある知人全員にFacebookメッセンジャーや電話で連絡をとり、実際どんな来場者が来ていたのか、出展してみた結果どうだったのかを尋ねます。
特定の展示会についてだけでなく、最近出展した展示会や、成果が良かった展示会、悪かった展示会についても聞き取ります。

徹底的に情報収集した上で、自社に合うと判断したものだけに出展するようにしています。

例えばferret Oneでは、ある展示会への出展を検討しましたが、結局止めました。理由は、来場者のリテラシーが高すぎるためです。ferret Oneの導入が最も検討される、マーケティング組織立ち上げのタイミングはすでに過ぎていて、より高度な支援を求めている来場者が多いことが分かりました。
一方、「営業DX EXPO」や「Web販促 EXPO」など、IT・マーケティングリテラシーが比較的低めで、これからマーケティングに力を入れようとしている来場者が多く集まる展示会との相性は良く、期待以上の成果を出すことができました。

たとえ展示会の名称に“ど真ん中”のキーワードが掲げられていたとしても、実際にどのような来場者を想定しているのかは必ず確かめるべきです。
以前、とある展示会に出展したのですが、キーワードやテーマ自体は自社サービスにピッタリだったものの、実際の来場者が自社のペルソナと全く合っておらず、大変な思いをした経験があります。

同業他社の知人から情報収集できるに越したことはありませんが、もし難しければ、競合企業が過去に何回出展しているかは、調べるようにしましょう。
例えば「過去3年間、3回連続で出展している」のであれば出展先として適している可能性が高いでしょうし、「過去に何度か出展していたけれど、直近は出展していない」のであれば、何らか問題があったことが推察できます。

 

展示会の効果を最大化するTIP

― 「展示会出展の投資対効果を上手く説明できない」という悩みの声が多く聞かれます。納得感のある説明方法はありますか。

まずは、展示会に出展するのに最低限どれくらいの費用がかかるのか、相場感を知っておく必要があります。

費用は「場所代(出展費)」と「上物代(施工・装飾、運営スタッフ、配布物など)」に分けて考えます。場所代は、小間数に応じて主催者側に支払う費用。上物代は、それ以外のあらゆる費用を含むもので、最低でも場所代と同額程度はかかると思ったほうがいいです。
0.5~1小間のごく小規模なブースであればもっと安価に収めることはできますが、それ以上の大きさであれば、場所代:上物代=1:1が最低ラインと考えましょう。

もう少し踏み込むと…ブースには「木工ブース」と「システム部材ブース」の2種類があります。

木工ブースの場合、上物代は場所代の2倍以上かかります。例えば場所代が150万円だとすると上物代は300万円、計450万円が出展にかかる総額です。木工ブースは基本的に完全オーダーメイドかつ使い捨て前提で、職人の方が1から作るため、費用が高くなりがちです。

一方、システム部材ブースであれば、使い回しができる部材を使うのでその分安価で、場所代と上物代を1:1に収めることも可能です。しかし僕の経験上、1:1だと何かと切り詰める必要が出てくるので、どうにか1:1.5程度は確保したいところです。

この前提を押さえた上で、目的・目標を起点にシミュレーションを行いましょう。先ほどの人員計画の際と、同じ表を使います

「名刺・バーコード獲得数」「当日商談数」「本商談予約数」「本商談数」「成約数」など出展の目的を設定し、来場者数を踏まえてそれぞれ目標数値を設定します。
目標は、会期中全日程の合計目標、1時間あたりの目標、さらにスタッフ1人あたりの目標に落とし込み、これに基づいて人員計画を立てます。

目標を設定する際は、
・2小間の出展で、来場者の5%前後の名刺獲得が可能
・本商談予約を獲得しても、実際に商談が行われるのは8割以下
という原則を踏まえる必要があります。

このシミュレーションを行うことで、「〇件の成約獲得を目指すため、必要な費用は場所代〇万円+上物代〇万円、計〇万円です」といった具合に、投資対効果が説明しやすくなります。
また、獲得可能なリード数の上限を踏まえて計算してみて、目標とする成約数が獲得できそうになければ、その展示会には出展しないほうがいいということになります。

― なかなかブースに立ち寄ってもらえない、前を通りかかっても立ち止まってもらえない、といった悩みが多く聞かれます。来場者が思わず足を止めるようなトークのコツを教えてください。

トークスクリプトは、展示会の開催地によって変えることをお勧めします。というのも、同じテーマの展示会であっても、エリアによって“通じる言葉”が変わるんです。

来場者のIT・マーケティングのリテラシーの高さによって、言葉遣いをチューニングする必要があります。
例えば東京では「MQLを増やしましょう!」で通じますが、大阪・名古屋では「お問い合わせを増やしましょう!」「Webからのリードを増やしましょう!」といった、より平易な言い方のほうが伝わります。

あくまでも展示会内のコミュニケーション活動に限りますが、大阪・名古屋では、BtoBマーケティングは「何となく知っている」というレベルの人が大半で、しっかり理解して実践できている人はまだまだ多くないのが実情でした。

ferret Oneでは、開催地ごとに次のようにキャッチフレーズを変えていました。

― 商談獲得・成約の確率をより高めるために、展示会で獲得した名刺にはどんな情報を付加して後工程へパスするのが良いでしょうか?

後工程にパスする情報を充実させるより、その場で商談したり、本商談の予約を獲得することのほうがはるかに重要です。聞き取った情報をメモ書きしている時点で“他社に遅れを取っている”と考えましょう。

とりあえずキャッチ担当が名刺交換をして、名刺情報とともに後工程にパスする…という段取りになるのは、ブース内での役割分担が上手くできていない証拠かもしれません。

後工程に共有すべき重要な情報があるような温度感の高い来場者であれば、ブース内でキャッチ担当から商談担当に即座につなぎ、その場で本商談予約を獲得し、その後のやりとりもブースで商談した本人が行うほうがいいです。

確度の高い来場者ほど、できるだけその場で本商談獲得までこぎつけるのが大原則。後工程に回そうとすればするほど、いたずらに商談獲得・成約の確率を下げるだけです。

一方、温度感の低い来場者に対しては、ニーズや状況に応じた個別アプローチを細かく考えるより、ある程度一律対応で構わないので、とにかく一刻も早くアプローチしたほうがいいでしょう。

スピード感としては、当日中にはMAツールにリード登録を完了し、遅くとも翌日中にはインサイドセールスチームから一度目のコールを行いたいところです。

 

◆ウェビナー

他の施策との組み合わせがより重要に

― 近年急速に浸透したウェビナーですが、施策としてのメリットとデメリットを教えてください。

商品・サービス情報など「自社が伝えたいこと」を、多数の相手に向けて一度に伝えられるのが最大のメリットです。1対1でしか話せない通常の商談と比べ、非常に効率が良いと言えます。

デメリットとしては、ウェビナーという施策自体がBtoBの購買関与者にとって、一時ほど重要なものではなくなっていることが挙げられるかもしれません。良くも悪くも、特別なものではなくなった。

コロナ禍真っ只中では、リアルなセミナー・展示会での情報収集が難しくなった分、ウェビナーが重宝され一気に浸透しましたが、事態が収束した今となっては「マスト」ではなく「ベター」のマーケティング施策。重要だけど「選択肢の一つ」にすぎなくなったと言えるかと。

加えて、良い意味でウェビナーが浸透した結果、もはやラジオに近い感覚で聴く人も増えています。アーカイブ配信を1.5~2倍速で聴くという「タイパ(タイムパフォーマンス)重視」の人たちも少なくなく、単体で刺さる施策ではなくなったという印象を受けています。私もよく1.5倍速でアーカイブ配信を見ています。

ゆえに、「展示会とウェビナー」「ホワイトペーパーとウェビナー」といった具合に、いかに他の施策と組み合わせて実施するかが重要になっていると思います。

経験上、最も効果的と感じるのは「ホワイトペーパーをダウンロードした人向けに、より詳しい話が聴けるウェビナーを用意する」という流れです。
昔行った自社調査ですが、手に入れたホワイトペーパーを、実際に読んでいる人は全体の50%以下でした。「興味があるから、忘れないようにとりあえずダウンロードしておこう」という人が半分以上いることがわかりました。せっかく接点を持った人との関係が、それきりになってしまうのはもったいない。「ここでしか聴けない情報」を交えたウェビナーで、関心を繋ぎとめましょう。

また、過去に商品・サービス導入を検討していた人に向けたリテンション施策としても、ウェビナーは有効だと思います。一度離れてしまったユーザーに、商品・サービスの説明資料を送っても、なかなか戻ってきてはくれません。ターゲットのニーズを踏まえ、興味・関心を喚起するウェビナーを企画し、掘り起こしを図りましょう。

 

プロダクトセミナーの精度向上が最優先

― 「ウェビナーで、思うような成果が出ない」と相談されたら、河村さんはどのように改善策を見出していきますか?

聞くポイントは次の3つです。これさえ聞けば、大抵の場合、成果が出ない原因がどこにあるかわかります。

あなたが実施しているのは、どんなウェビナーでしょうか。
複数の登壇者がリレー形式で話すカンファレンス、業界の最新ノウハウを提供する共催セミナー、自社商品・サービスの説明がメインのプロダクトセミナー……「ウェビナー」と一言で言っても、実に様々な形態があります。

カンファレンスは、数は多いものの購買意向がまだ低い人(そのうち客)が集まる傾向があり、プロダクトセミナーは、数は少ないものの購買意向が高い人(今すぐ客)が集まりやすい傾向があります。自社が求める成果に合った形態を選べているか、確認しましょう。

次に、成約数の目標から逆算して、必要な人数を集客できているでしょうか。
不足しているようなら、企画内容や集客方法に改善の余地があるかもしれません。

最後に、ウェビナー終了後、インサイドセールスがコールするまでのタイムラグはどれくらいでしょうか。
時間が空けば空くほど、商談獲得率は下がっていきます。できれば5分以内、遅くとも10~15分以内には、アンケートで「商品・サービスに興味がある」と回答した人に対してはコールをしたいところです。

― ウェビナーには様々な形態があるというお話が出ましたが、効果的な組み合わせや、優先順位はありますか?

「ゴール、成果に近いところ」から着手すべきというマーケティングの鉄則に従うと、まずは購買に近い人が参加する可能性が高い、「プロダクトセミナー」の精度を上げるのが最優先と言えます。

プロダクトセミナーの投影資料は、既存の営業資料をベースに作成することができますし、そこに導入事例を1~2点加えることで、セミナーとして十分成立する内容になります。トークスクリプトも商談の流れに近く、「商談を1対多で行う」イメージと言えます。これまではマーケティングにあまり力を入れず、営業主体で成果を上げてきた企業にとっても、取り組みやすいウェビナーと言えます。

また、「人が多く集まっているところ、レバレッジが効きやすいところ」から着手すべきというマーケティングの鉄則に従って、例えばダウンロード数が多く、成約にもつながっている「ホワイトペーパーの内容をウェビナー化する」のも一手です。ノウハウ共有系のウェビナーですね。

これまで、ホワイトペーパー→商談→成約という流れだったところを、ホワイトペーパー→ウェビナー→商談→成約とウェビナーを間にかませることで、購買意向を効果的に高め、商談獲得率・成約率を高めることが期待できます。

また、順番は逆になりますが、商談後に「録画をしたウェビナー」をユーザーに共有することで、営業フォローにも使うことができます。

いずれにしても、一刻も早くウェビナー由来の成約実績をつくることで、ウェビナー強化のための予算を確保することを目指しましょう。

また、成約実績ができれば、ウェビナー終了後のコールや、ウェビナー由来の商談対応など、営業部門の協力も得やすくなります。「ウェビナーからは、成約につながる良いリードがパスされる」と思ってもらえるようになると、ウェビナーの成果はさらに上がっていくでしょう。

 

何より「ユニーク情報」が重要

― ウェビナーの成果をさらに高めていくために、どのような改善を優先的に行うべきでしょうか。

参加者がウェビナーに満足するかどうかは、結局のところ「コンテンツ」次第です。特に、そのウェビナーでしか聞けない「ユニーク情報」があるかどうかが重要と言えます。
そのお店でしか食べられないオンリーワンのメニューがあれば、たとえ店長の態度が無愛想でも、店内が少々キレイでなくても、食べに行く人がたくさんいるのと同じことです。

ですから、いかにユニーク情報をつくるかが大事です。

例えば、先ほどお話しした「ホワイトペーパーは、ダウンロードした人のうち、実は半数しか見てない」という情報は、あまり表には出てこない、独自の調査データです。僕がノウハウ提供型のウェビナーを企画する際には、こういうユニーク情報を記載したスライドを1枚つくり、それを中心に前後のストーリーを組み立てていくことが多いです。

但し、ユニーク情報が満たすべきポイントが2つあります。

一つはユニーク情報と自社商品・サービスの特長が関連していることです。関連がないと、「今日は良いことを聞いたな」と、参加者は情報だけ聞いて満足し、その後の購買活動に繋がりません。

もう一つは「定量データ(数字)」を伴っていることです。数字を元にした、ちゃんとした根拠がある必要があります。例えば、自社の商品・サービスに関する独自調査の結果をまとめたり、自社で取り組んだ施策の成果を公開したりと、自ら「定量データ(数字)」をつくるのが効果的と言えます。

なぜ数字が大事なのか。それは、ウェビナーの主な集客方法がメールやSNSだからです。OGPやバナーに数字が出せるか出せないかでは、集客効果がまったく違います。

例えば、「〇〇社のXXXXが登壇します」と名前だけを出すよりも、「累計10万部のベストセラー著者、XXXXが登壇します」と数字を出したほうがわかりやすいし、ウェビナーを聞く側も価値を感じやすい。数字は、意識してつくりにいきましょう。

ウェビナーの成果を上げるには、コンテンツの他に、「画面に目を向けさせる工夫」も大切です。「タイパ重視」の人が増えているとお話ししたとおり、ウェビナーは「見ずに、聞くだけ」という人もたくさんいます。その人たちの意識をこちらに向け、画面に注目してもらうためには、どうしたらいいでしょうか。

例えば、話者が「グラフの、この部分をご覧ください。すごく重要な情報ですよ」と言ったら、思わず画面を見たくなりますよね。その瞬間、参加者にとってのウェビナー体験が、“ラジオ”ではなく“セミナー”に戻ります。ユニーク情報をスライドに掲載した上で、話者から注目するよう呼びかけることが不可欠です。

また、ウェビナーに参加するモチベーションを喚起する「特別な体験」も必要です。例えば、プロダクトセミナーを週に複数回、毎回アーカイブ配信で行っていると、参加者にとっての特別感が損なわれ、参加率や満足度が下がる傾向があります。
そこで、マーケティングオートメーションツールを提供するA社では、録画だけの回と、質疑応答ができる回を設けたそうです。“ながら聴き”したい人は前者に、比較的商品・サービスへの関心が高い人は後者にと自然にすみ分けができ、後者の参加者に対してより手厚いアプローチができるようになったわけです。

デジタルマーケティング支援会社のB社では、ウェビナー本編終了後すぐにビデオを切らず、アンケートに回答してもらう間に、ちょっとした“延長戦”というか、“こぼれ話”をします。録画を切って、「ここからは、表に出せない話をしましょう」と言って裏話を始める。その話を楽しみにその場に残る人は多く、アンケート回答率も上がるそうです。

 

アンケートでは「ネクストアクション」を聞き洩らさない

― ウェビナー後、商談や成約へとつなげていく上で重要な役割を果たすのがアンケートだと思います。質問項目か、回答特典か、あるいは回答を促すタイミングか…アンケートをより効果的なものにするための改善ポイントを教えてください。

アンケートでは、質問項目が一番重要で、必ず聞くべきなのが「ネクストアクション」です。ウェビナーの内容を踏まえて、次に何がしたいか。詳しい話が聞きたいのか、説明資料が欲しいのか、デモを見たいのか――参加者が希望する次のアクションを明確にする質問をしましょう。

実は以前調査したのですが、自社商品の説明をする「プロダクトセミナー」を除いた「ウェビナーの満足度」と商談転換率・成約率は比例しません。よく考えれば当たり前なのですが、ウェビナー自体が面白かったか・役に立ったかは、購買意向とは関係がないんです。

次回の企画に向けた改善を目的に聞く分には構いませんが、「成果につなげる」という意味では、満足度を聞くことにはあまり意味がないと心得ましょう。

唯一、商談転換率・成約率と比例するのが、商品・サービスに対するネクストアクションの意向です。アンケートに、以下のような質問項目を入れると良いでしょう。

・この商品・サービスを導入したいか、したくないか
・この商品・サービスに関心があるか、ないか
・次に何がしたいか(詳しい話が聞きたい、説明資料が欲しい、デモを見たい、など)

以前行った調査によると、ネクストアクションとして選択したのが「詳しい話が聞きたい」だと50%、「デモを見たい」だと25%、「説明資料が欲しい」だと12.5%という割合で、商談を獲得できることがわかりました。

また、「商品・サービスに関心がない」と回答した人から商談を獲得できた割合は0%だった一方、無回答だった人からは5%獲得できたというデータもあり、「関心がない」がいかに強い意思であるかがわかります。

ferret Oneでは「関心がない」と回答した人にはコール不要と、インサイドセールス部門に明確に伝えていました。だって、本当に関心がないのですから。
ちなみにネタ話を一つお話しすると「サービスにそこまで興味はないけど、せっかく話を聞かせてもらったので、この場で断るのも気まずいな」と、日本人にありがちな考え方をする方はアンケートで「説明資料が欲しい」を選択されます。私もよくします(笑)。

結果として、同じようなアクションに見えて「デモ」と「説明資料」で商談獲得率に2倍の差が生まれるのだと推測しています。

質問項目の次に重要なのは、回答を促すタイミングです。回答は、繰り返し促しましょう。というのも、ウェビナーはいろいろなタイミングから参加でき、最初から聞く人も、途中から入る人も、途中で退出する人もいます。どこから入っても、どこで離脱しても、アンケートがあることがわかるよう、導入時・中盤・終了時と何度もアナウンスすべきです。

Zoomを使って配信している場合は、ウィンドウを閉じたときに強制的にアンケートを表示する機能を使うのも有効です。

また、回答特典は、早めに伝えておくのが良いでしょう。例えば「アンケートに回答いただいた方には、本日のウェビナーの投影資料を差し上げます。ですから、ウェビナー中はメモをとるより、お話しする内容に集中していただけたら」と冒頭でアナウンスすれば、アンケート回答率もウェビナー満足度も高まります。

アンケートツールは、回答データの抽出・成形に時間がかかったり、操作が複雑だったりするものを避ければ問題ありません。インサイドセールスとの連携が滞り、コールが遅れる事がないよう、シンプルなツールを選ぶのをお勧めします。