営業DX戦略の肝は「デジタル時代のマーケティング」を正確に身に付けること
―― まずは貴社のサービスについて教えてください。
リンナイは、「Creating a healthier way of living」(快適な暮らし方を創造しよう)をブランドプロミスに掲げ、ガスコンロなどのキッチン、リビング、バスルームほか、多様化する生活シーンやお湯ライフに関する商品を製造、販売しています。
我々が対面しているお客様は、ガス事業者や建築資材系商社の皆さまがメインになりますが、その先に工事を行う工務店・リフォームショップなどの会社の皆さまがあり、さらにその先に実際の商品を使われる個人のお客様がいる、という構図です。そのため、それぞれの関係者に対して製品情報や利用方法のご紹介など、弊社商品によりご興味をお持ちいただけるようなプロモーション活動も幅広く行っています。
――なぜグロースXが選ばれたのでしょうか?
まず私の所属組織についてご紹介します。営業本部というBtoBのセールスの部門で、日々売り上げを追いかけています。その営業本部の中にマーケティング・プロモーションの担当部門があるといった組織構造になっています。そのため、会社の中では「マーケティング=営業のための販促活動」という認識が少なからずあります。そういった事情もあって、これまで営業研修は行ってきましたが、マーケティング研修はあまり実施したことがありませんでした。
そんな折、2020年にDXを推進しようという会社の方針に伴い、今私が所属している「DX推進室」という部署が立ち上がりました。半年位いろんな取り組みを進めている中で、営業本部長から「各担当者のDXの知見をもっと高めたい、エリア毎に差が出ないようにして欲しい」というオーダーがきました。それまで色々なシステムを導入しましたが、エリアによって活用に差が出ている、そもそもの目的が何なのか?という知識も身に付けないといけないということがようやく分かってきた時期でしたね。
知識を身につけるための対策取り組みとして、例えばパートナー企業さんに講師になってもらい、社内ウェビナーで講演していただく機会も設けました。ただ、これまでの取り組みでマーケティングの下地が無いインプットが少ないので、横文字がわからないスッと入ってこないんですよ。「LTVの最適化」と言われても、そこでちょっとつまってしまう状況です。そこで、まずは基礎知識をつけていく必要性を感じ、改めてその手段を探すことになったのです。
そのタイミングで、たまたま参加したイベントでグロースXを知り、問い合わせをしたのが最初のきっかけです。その時、ちょうどグロースXからBtoB編がローンチされるタイミングでした。まさにこれだ!と思って、すぐに話を聞きました。”マーケティング”と言ったときに、プロモーションだけを指す人もいれば、顧客理解とか市場調査まで含める人もいます。そういう「レベル感の違い」を曖昧にせず、デジタル時代のマーケティングの共通言語化を図ろうというグロースXの思想が、当社に合うな…と分かりました。
また、学習のスタイルも導入を決めた大きなポイントでした。第一弾として最初に受けてもらった約70名のメンバーは、営業現場でも活躍している者が多く、その分、例えば「1時間の動画を見てください」というような、まとまった時間を確保するのが難しい状況でした。その点グロースXは、通勤中はもちろん、お客様先に少し早く到着して時間をつぶしているタイミングだとか、商談と商談の合間の数分だとか、ちょっとした隙間時間に場所や時間を選ばずに受講できたことが、かなり大きかったです。
第一弾の約70名は、大半の方から「やって良かった」と評価して貰いました。現在は第二弾として約40名が学習しています。
アンケート結果から抜粋。いずれも90%以上が「実感している」以上を選択
共通言語が生まれて、スピード感は増し、改善がどんどん回り始めた
―― グロースXを導入して、どんな効果がありましたか?
受講者同士で「共通言語」が生まれて、圧倒的に話が早くなりました。
自分が担当している領域以外の目的が理解できる。お客様との接点を俯瞰で見ることができる。その結果、全社の施策と各エリアの施策で目的の差を理解して、より活用する動きが生まれています。
極端な例ですが、以前は、新製品を発表するメール配信を行おうとすると、営業から「自分が最初にお客様に情報を届けたいから、メールを配信しないで欲しい」という声が上がったこともありました。気持ちはわかるんですが、デジタルでご案内する接点と営業担当が直接訪問する接点は顧客から見れば別のもので、並行してもいいはずです。取り組みの目的をきちんと全社に説明できていない力不足を感じていました。
今では、メール配信やWebセミナーを活用しつつ、その内容を商談の冒頭に触れて、既にご覧になっているお客様にはすぐに詳細のご案内をする、まだご覧になられていないお客様には概要からご紹介をする、といった営業が出来ている話も聞こえてきており、全体最適を図りつつ、デジタルを活用してより効率的・効果的なアプローチができるようになりつつあります。デジタルを活用したマーケティング施策への「共通認識」がはじまったな、と感じますね。
―― 「共通言語ができると、話が早くなる」という声は受講者様からもよく聞きます。話が早くなると、施策の速度感が増し、実行数が増えて、成功する確率も上がる企業様が多いようです。
各エリアで企画しているウェビナーで、そうした効果を実感しました。
”ウェビナー”と言っても、「既存顧客は営業担当がフォローできている、対応しきれない新規顧客向けにデジタルを使って商品情報を届けたい」と考えるエリアや、「既存のお客様との関係性をもっと強固にしたい」と考えるエリアもあって、方向性が統一できていませんでした。何を伝えるのか、どういった結果を追うのかは、目的に応じて異なります。そうした違いが分からず「ウェビナーだ!」と手段だけが注目されてしまい、会話が噛み合わなかったんです。
ただ、グロースXの学習を進めていくことで、どういったお客様に向けてどんな情報を発信していくべきか、どんなゴールを求めるべきかの認識合わせができるようになりました。
一例ですが、最初は単純に機能紹介だけをしていたウェビナーで徐々に改善が回り始めて、例えば「なぜその機能をつけたのか」「どう活用してほしいのか」といった顧客の提案に役に立つような内容が盛り込まれました。ウェビナー担当者からは「施策を考えやすくなった」という声や、アンケート結果などが改善されたなど、様々な効果も出るようになってきました。
さらに、各エリアごとにウェビナーを企画していたんですが、「あのエリアのウェビナーは好評だったらしい」という評判を聞いた別エリアのメンバーが、好評だったエリアのメンバーに直接連絡を取って、情報連携し始めました。それまでは、同じ会社の中でもなかなか情報共有が十分ではありませんでした。ただ、「一緒にグロースXを学習しているあの人なら背景が分かっているはずだから色々と聞きやすい」と思ってくれたようで、現場間でどんどん情報共有が進んでいます。
受講を完了しているメンバーがまだ全体の1割程度なので大きな動きにはなりきれていませんが、確実に変化が起こっています。今受講中のメンバーもいますし、徐々にグロースXでマーケティングの基礎知識をつけて組織を大きく変革できたらなと考えています。
営業部門全員で取り組む”顧客価値”の最大化
―― 貴社の今後の取組について、教えてください。
グロースXを受講すると、ビジネスの成功を見据えて徹底的に根本から考えさせられます。マーケティングの研修というと、どうしても施策の話になりがちです。もちろんそういった知識も大切なんですが、その領域を担当しているメンバー以外は自分事化が難しく、興味を持ちにくいんですよね。
一方でグロースXはカリキュラムや月1回の共通言語MTGで、「あなたたちのビジネスは、誰の・どんな成功のためなのか」と問われ続けるんです。当社の場合、その問いに考え続けた結果、自分の業務を超えて「この部署のこのやり方を真似したらどうだろう」「あのエリアのあの人に意見を聞いてみよう」と、お客様に本質的な価値を感じていただくために、今までになかった手段を取れるように変化しつつあります。
ですから、もっと多くのメンバーにグロースXを受講してもらってマーケティングの素地を作り、社内の話は早く済ませて、お客様のために時間と思考を使える組織にしていきたいです。
弊社の営業部門は全体で約1,200名という大所帯です。そのうちお客様に対面するメンバーは900名もいます。すでに約100名がグロースXを通してマーケティングの基礎を共有できる素地が出来つつあります。直接お客様と対面する現場メンバーと、指揮するマネジメント層、この両者のコミュニケーションが変わると、もっと明確な変化が生まれると思います。
しかも受講者それぞれが持っている情報やエピソード、成功事例はそれぞれ異なるので、それらをスムーズに共有できるようになると、より「顧客の成功」のために貢献できるのではないかと考えており、今から楽しみです。
(インタビューご協力:リンナイ 様)