三井住友海上火災保険株式会社

マーケティング思考が会社を変える。三井住友海上が実施したマーケティング人材育成のポイントは「大規模に・体系的に・素早く」

お客様への更なる価値提供には「マーケティング思考」による変革が必要だった

 ――まずは貴社のサービスについて教えてください。

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三井住友海上火災保険は、自動車保険や火災保険など、皆様が家や車を購入する際にご利用いただく身近な保険を取り扱っている会社です。

最近は自然災害も激甚化しています。例えば、大きな雹(ひょう)が降って車の屋根などがボコボコに壊れてしまうなど、想定を上回る被害が発生しています。そのようなときにきちんと保険金をお支払いすることは勿論ですが、そもそも事前に対策することで自然災害によるお客様の被害をいかに減らしていくかを考えることも、我々のミッションであると考えています。

例えば、被害が想定される前にアラートを慣らして、お客様にお伝えする対策を始めています。この5~6年で本格化させてきたDX戦略により、お客様のお住まいの地域や居住環境、車の所有有無などをデータとして一元管理できるようになりました。そのデータを用いて、災害が起こりそうなエリアのお客様に「雹が降るのでお車を屋根のある場所に移動しましょう」「豪雨が来ますのでご注意ください」などのお知らせをメールでお送りしています。

 

――なぜマーケティング研修を導入しようと思われたのでしょうか?

現在、損害保険会社の多くが、保険代理店さんを挟んでお客様にサービスをご提供するビジネスモデルとなっています。代理店さんに、お客様向けのご対応の多くをお願いさせていただいているのです。

しかし、昨今のお客様の動向を見てみると、お客様ご自身がインターネット等で検索をされて、たくさんの情報を得ていらっしゃいます。さらに、オンラインのみで契約が完結する保険サービスも徐々に一般化してきました。

このような環境を踏まえると、我々もこれまでの形式に固執せず、柔軟な営業スタイルを取り入れていく必要があると考えました。そこで鍵になるのが「マーケティングを全社に浸透させること」でした。

もともとDX戦略は全社をあげて強く推し進めていましたが、マーケティングに関する取組はほぼ行っていませんでした。そこで、3年前にCXマーケティングのチームを立ち上げ、オンラインコミュニケーションを始めとした「お客様との接点(CX)作り」を推進し始めました。

ただ、それで一気に全社にマーケティング思考が浸透したという訳では勿論ありません。元々の営業スタイルで実際に売上が上がっている中で、変革の重要性を理解してもらうには大変な時間と工夫が必要でした。

中長期的なマーケティングの重要性をどれだけ語っても、短期の売り上げがすぐに変わるわけではないですし、変わることへの不安もある。しかし、組織全体や世の中の動き、競合他社の動向を考えたら、できるだけ早く変わる必要もあるわけです。

そこで、グロースXを活用したマーケティング研修で社内に知識の浸透を図りました。さらにマーケティングを活用した成功事例を少しずつ増やし、変革を理解してくれる味方を広げていくという、まさに「草の根運動」をし続けてきました。

今なおそういった活動を継続的に続けていますが、ようやく「マーケティングを学ぶことが、自分たちのために、そしてお客様のためになる」という意識が会社全体に広がってきています。結果として、マーケティング研修を志願する社員を更に増やすことができたと感じています。

 

「マーケティングで会社を変える」人事制度と組み合わせた変革

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――なぜグロースXを選ばれたのでしょうか?

マーケティングで会社を変える、という一大プロジェクトを行うにあたっては「大規模に・体系的に・素早く育成する」ことが非常に重要だと考えていました。その条件に基づいて様々なサービスを比較検討した結果、グロースXに行き着いたんです。

導入前にも、私が講師役をして単発的に社員数百人に対してマーケティング講習をする機会もありました。ただ、それだと準備や調整の関係で、1時間半の研修を半年に1回程度行うのが精一杯でした。社員の中には業務時間が限定されている子育て世代もいますし、同じ時間に受講生全員を集める難易度も高かったんです。

一方で、グロースXは1日10〜15分程度で学習できる分量で、スキマ時間に手元のスマホですぐ学べる。通勤時間や家事の手が空いたタイミングなど、学ぶ時間も自分で決められますので、受講者それぞれが自分の時間軸に合わせて学習を続けやすい点は、受講者からもとても好評でした。

2022年から導入していますが、利用し始めた1年目は200名程度が受講していました。受講者のアンケート結果からも、手軽に受講できる、続けやすい、とグロースXに対する評価や好意が非常に高かったんです。そこから利用規模を徐々に拡大していって、現在は約600名が受講しています。日々のめり込むように毎日の学習を続けている、という声を聞くと、受講者自身が楽しんで学習できるのかどうか、という点でもとても良い選択だったと感じています。

 

――グロースXを導入して、どんな効果がありましたか?

20240620_三井住友海上資料【グロースX研修修了者の声】※当社ウェビナーからの引用

まず、これまでプロダクトアウトで会社目線だった社員のマインドが「顧客本位・お客様視点」に変わってきたことが1番大きな変化です。マーケティングを理解することで、お客様をどう理解し価値を提供できるのか、という企業文化に変わってきています。

それに、マーケティングが受講生同士の共通言語・共通知識となり、社内の取組でマーケティングが当たり前のように語られるようになりました。グロースXを学習した受講生同士は”話が分かる”という安心感がありますので、現場同士でもマーケティングを活用した業務改善・推進が進んでいます。

た、人事部と連携して、グロースXを社内資格制度の要件の一つとして組み入れていています。マーケティングのスキルを三段階に分け、第一段階は「グロースXの研修を受講完了すること」を要件の一つとしています。第一段階をクリアすると「第一段階を卒業できた」という社内スキルが認定されます。この社内スキルがあると、マーケティングを知っているというラベルができて業務遂行をしやすくなったり、社内異動の希望を出す際に有利になったりします。

また、社内資格はステップアップしていくことで給与にも連携しますのでスキルアップのモチベーションにもなります。さらに「マーケティングを学ぶ」ことが人事評価制度として可視化されることで、社内活躍のチャンスにも繋がっています。

 

――グロースXで得た知識やスキルを活かす場づくりもされていると聞きました。

学習したことがちゃんと業務で活用できるような支援も、かなり注力して取り組んでいます。受講者がマーケティングの基礎を身につけても、業務で関わる同僚や先輩、上司が、まだマーケティングを学習していないケースがあります。こういった場合、受講者はマーケティング知識に基づいて様々な改善策や提案を打ち出しても、他のメンバーに理解してもらえないかもしれません。また、相談したい・質問したいことがあっても、話を聞いてくれる相手が近くにいないかもしれません。

その時は、我々の出番です。ちょっとした疑問や質問にできるだけ細かく対応し、マーケティングを活用した施策をどうやって業務に落とし込むのか、どうやって周りを巻き込んでいくのか、受講者と一緒に考え、場合によっては一緒に提案し、「学習したことが、ちゃんと現場で使える、そして便利になる」という実践例を少しでも多く積み重ねることを大切にしてきました。一種の社内コンサルに近い立ち位置かもしれません。

成功例が増えてくると、当然、これまでマーケティングに懐疑的だった方の印象も変わってきます。これまでのやり方を変えていないベテラン層も「こんなに良さそうなら、ちょっとやってみようか」「試してみてもいいかな」と、徐々にポジティブな変化が出てきているんです。徐々に受講者も増えてきた今では、マーケティングというワードが日常化しています。

マーケティングが分かると、様々な業務を繋ぐ「トランスレーション」ができるようになっていきます。IRでも開示している通り、我々は「社内に5,000名のトランスレーターを作る」ことを目標にしています。もちろんこの人数規模は企業規模に比例すると思いますが、組織を変えていくには確実に一定のトランスレーターの比率が必要です。改革スピードが想定よりも円滑に進んでいるので、この目標は前倒しで達成できそうですが、さらに多くの社員にトランスレーターになってもらう・目指してもらえるように、引き続き働きかけていきたいと考えています。

 

「マーケティングで会社を変えたい」担当者の強い気持ちが今の成果に繋がる

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――他の方にグロースXをお勧めできる点をあげるとしたら、どういった点でしょうか?

組織の変革を行うために、「大規模に・体系的に・素早く」マーケティングを学習する上で、グロースX一択だと思います。私が所属するマーケティングの組織は5人で立ち上げ、現在では70名の規模になりました。カルチャー変革のきっかけになるポイントは、このキーワードでした。

私自身もたくさんのサービスを試しました。どんなことが学べるのか、どの粒度なのか、ちゃんと続けられるのか。どれだけ良い内容でも続けられなければ意味が無いですから、体験してみて「ちゃんと続けられる」という点は非常に重要だと思います。

そしてもう一つ、変革のためには、担当者の心の強さと信念が非常に重要です。私たちも、社内で受け入れてもらうためにはたくさんの苦労がありました。でも、絶対に必要なんだ!変えるんだ!という「マーケティングで会社を変えたい」という担当者の強い気持ちがあったからこそ、今の成果に繋がっています。

 

――貴社の今後の取り組みについて、教えてください。             

マーケティング学習を活かし、部署間の関係の深化と進化をより強固に社内に築いていきたいですね。

マーケティングに本格的に取り組むにあたって、短期的には外部からの採用等でマーケティングに長けた人だけを集めて部署を作る方が効率が良いかもしれません。しかし、保険会社としてずっとお客様に価値を提供し続けていくためには、長い目で見て安定的な体制・部署を作っていかないといけません。マーケティングを社内の共通言語として浸透させることで、現場を知りつつ部署間連携の重要性を理解できるメンバーも自然とマーケティングを担う部署に集まってくる、という理想的な部署の構成が実現できました。

もちろん、グロースXを学んだメンバーには、マーケティングの専門部署だけではなく、各々の現場でそれぞれ活躍をしてほしいです。その経験や知識をもって、現場の第一線や部門間連携に取り組む部署で活躍してもらえたら、会社として組織として、全体感を理解しつつ現場もわかる、強い体制作りの根幹になると考えています。お客様によりよい価値をご提供するためにも、このサイクルは維持・強化していきたいですね。