どうすれば社内で統一した言語や認識を持って商材に向き合えるか?
ーまずは貴社のサービスについて教えてください。
弊社は、映画やエンタメを中心とした企業様に、デジタルマーケティング全般をご支援している”エージェンシー”です。中でもソーシャルメディアマーケティングをメインに、デジタル広告やPR、映像やWebなどのクリエイティブ制作、インタラクティブAIのコンテンツ制作などを幅広く展開し、一気通貫してご提供する体制を整えています。
7月には映画の製作・配給・興行を手がける日本を代表するエンターテインメント企業である松竹様と東映様、そして16年間で1,000本以上の映画・エンタメ作品のデジタルマーケティングを担当し、数々の映画のヒットに貢献してきたフラッグの三社が共同で、映画マーケティングのDXを目指す「シネマDXプロジェクト(CDX)」を始動することを発表しました。
当社のメンバーは中途入社が多く、新卒は毎年数名ずつ採用しています。中途で入社したメンバーは、アパレル業界、音楽業界やゲーム系、PRエージェンシーなど多様なキャリアとバックボーンを持っています。特に私の管轄であるデジタルプロモーション事業部は、元々エンタメが好きで、転職活動の際にエンタメ業界に関わる仕事を求めて入社しているメンバーが多いですね。年代別に見ると、20代後半から30代半ばが1番多くなっています。
―なぜマーケティング研修を導入しようと思われたのでしょうか?
主な事業であるプロモーションとクリエイティブという2つの領域で、それぞれ日常で飛び交う言語も異なりますし、見ているポイントも異なる中で、双方をどうミックスしていくか、という点に会社として課題を感じていました。
各部署には、それぞれの領域のプロフェッショナルが在籍しています。当然、様々なプロジェクトで連携しているものの、組織としては別々の事業部になっていることもあり、さらにそれぞれがプロであるが故に、自分の担当領域にフォーカスし過ぎてしまったり、お互いにコミュニケーションの齟齬が生まれることも度々あり、課題になっていました。そうした環境下で、どうやって共通言語や共通認識を持ってお預かりしている商材に向き合っていくのか、と模索を続けてきました。
入社時の研修の内容も実案件に即したレクチャーや実践がメインで、その前提となる基礎的な学習についてはフォローしきれていなかったり、多数のプロジェクトを抱えながらだとリソースの限界もありました。そうした背景もあり、社外のソリューションで効率的に一気にマーケ知見とスキルの底上げをしたい、という結論になり、外部のマーケティング研修を探すことになったという経緯です。
「マーケティングを網羅的に学べるeラーニング」と「実践で活かすために月1回の議論」
―なぜグロースXを選ばれたのでしょうか?
メンバーには、全体像を描けるようなスキルを身につけて欲しかったんです。検討段階で様々な研修を調べていた際、個別のデジタルマーケティング施策を学習できるソリューションは、グロースXさん以外にもたくさんありました。ただ、エージェンシーとしてたくさんのお客様・多種多様な商材と向き合い、プロジェクトごとに目的も目標も異なる中で、一つひとつに最適なご提案が必要になってきます。個別の細かいプロモーション施策について理解とスキルを深めることも大切ですが、それは社内でカバーできる。それ以前に全体像をしっかりと理解している必要があると考えています。
4Pの視点でいうと、これまでの我々は「消費者視点でのプロモーション」のプロとしてお客様にご提案を差し上げてきました。ただ、他にも消費者視点での「プロダクト」「プライス」「プレイス」とプロモーションが連携していく必要があります。プロモーション以外の領域を全員がしっかりと理解した上で、お客様の課題を根本的なところで理解してご提案・課題解決しなければなりません。
そんな時に、グロースXを見つけました。1日10分アプリで気軽に勉強しながら他メンバーの回答も確認できる、月に1回グループで議論するMTGを主催してくれるという「グルーヴ感」がある。ディスカッションやワークショップを通して、どう実践で活かしていくのか、という落とし込みのサポートがある。ただ頭に入れて記憶するけど結局使い物にならないような学習ではなく、ちゃんと身に付くイメージを持つことができました。グロースXを見つけた時には、「これだ!」と思ってすぐに経営会議にあげ、全会一致で「やってみよう」と決定したことを覚えています。
そしてもう一つは、カリキュラムを監修されている西井敏恭さんや山口義宏さんが、マーケティング領域の現場でしっかりと結果を出されているという点です。元々、西井さんや山口さんの書籍を読んでいたこともありますが、机上の空論ではない、本当にちゃんと”使える”知識が身につきそうだな、という圧倒的な信頼感がありました。
自社分析を深めてお客様の課題に向き合ったことで売上112%成長
ーグロースXを導入して、どんな効果がありましたか?
第1期は経営層と各部門のマネージャー、あとは意欲のあるメンバーから選抜して50名、第2期でチーフやメンバークラスを中心に60名受講させていただきました。現在は、営業メンバーをメインにBtoB編を23名が受講しています。
様々な効果がありました。まず一つ目として、コミュニケーションが変化しました。
何より大きかったのが、グロースXのおかげで、別の部署の人たちとの共通言語・共通認識が増えた点です。プロジェクトを進める中で「グロースXの考え方に則って、こうしたらいいんじゃないか」という具体的な提案をすると、部署が違っても「あぁ、あれね」と相互に理解し合えて、コミュニケーションがスムーズに取れるようになったという声が多数挙がっています。
マーケティングのロジックを広い視点で学べたことで、これまでうまく表現できなかったことが言語化できるようになった、というのも大きいと思います。もともと何となく違和感を感じていた部分はあったけれど、お互いに領域外への理解がそこまでなかった、さらにどう表現していいのかわからなかったところがあります。それが理解が深まり、きちんと言葉にできるようになったことで、社内でもコミュニケーションが取りやすくなりましたし、お客様に対しても自信を持ってご提案できるようになりました。
二つ目に、事業構造を学んだことで、今まで以上にお客様の課題に向き合った提案・考え方ができるようになりました。売上の構造やマーケティング施策の出し分けなどを一緒に学んで、月1回の振り返りMTGで議論をし合ったメンバーで実際に案件に取り組んだ際、より深く継続的なご提案ができるようになったと聞いています。PDCAの見直しで今まで以上の高いパフォーマンスを発揮したり、もっと上流からのご提案をできたことで新たなお取引に繋がったという例もありました。
三つ目に、自社のビジネスモデルを振り返るきっかけにもなりました。カスタマージャーニーやバリュープロポジションなど、今一度自分たちのビジネスを経営陣と見直し、充足しているところ、不足しているところ、変革が必要なところが明確になりました。
例を挙げると、継続してご依頼くださっているロイヤル顧客様への対策を大幅に変えました。実はフラッグのお取引のリピート率は80%を超えているんです、これは私たちが大事にしていきているパーパス「人々の熱い想いに寄り添い、想像力と創造力で世界をつなぐ」を現場ひとりひとりが体現できている結果で、商材理解の熱量やクオリティを評価していただいている証拠でもあります。
これまでの経営戦略・営業戦略では、営業が新規顧客を増やす動きにかなり注力していたのですが、売上の大半がロイヤル顧客のみなさまで成り立っている中、その一方で、そうしたロイヤル顧客の皆様への対応が不足していたというか、もっと私たちが課題解決のお手伝いができる領域に対して踏み込めていないのではという考えに至り、営業を中心に全社をあげて「ロイヤルカスタマー戦略」を立ち上げました。今まで以上に全社員がロイヤル顧客の皆様のこと、業界理解、商材理解を深め、マーケティング視点を磨くことで、幅広く・力強くご支援できる部分があるのではないか、そんな対策をしていくプロジェクトです。
組織体制や営業戦略の見直しは、グロースXのワークショップで経営陣やマネージャー層が議論し、翌週の経営会議で具体の一歩を進める、というスピード感もありました。第1期の受講者にマネージャー陣が多かったこともあり、マネージャー陣がそのプロジェクトの重要性を理解し納得度も高かったので、組織としての浸透も非常に早かったと思います。
ー受講された方の反応はいかがでしたか?
正直なところ、不安を感じていたメンバーも多かったと思います。受講者にはクリエイターもいればプランナーもいて、それぞれの職種の人たちがちゃんと理解できる内容だろうか、日々の業務の中で学習についていけるんだろうか、という声もありました。
ただ、実際に始めてみると、それぞれが専門領域を持っていましたが、ある部分はおさらいになったり、ある部分は初めて学ぶ内容だったり、全体を通してちょうどいい粒度だったと感じています。私自身も受講しましたが、難しすぎず、細かすぎず、たしかにこのポイントは押さえておいた方がいいよねという箇所が多く、ちょうどいい塩梅だったなと感じています。
これまでは担当領域ごとに分業になっていた業務が、クリエイターで「このソーシャルメディアのクリエイティブの効果はどうだったのだろう?」と数値や結果を気にするメンバーも増えました。PDCAを回すために、週次のレポーティングと次に向けての施策の定例ミーティングを部門横断型でやったりと、連携の仕方が大きくかわってきたプロジェクトも多数あり、やはりそういう案件だとよいコミュニケーションとアウトプットにつながっています。グロースXを受けることで、視座が揃ったメンバーの行動・クオリティの変化は顕著に表れています。
第2期のメンバーでの振り返りMTGでは、60名の受講者を10名ずつ6チームに分けて、チーム内も複数の部署が混在するように設計しました。加えて、チームの中にはチーフやプロジェクトリーダーなどマネジメント経験のあるリーダーの役割を2名置き、どのチームもちゃんと議論が盛り上がるように配置しました。チームメンバーによってもモチベーションが変わってしまうので、誰かが置いてきぼりにならないようなチーム構成だったことでより議論が進み、視座を揃えることにも効果的だったのかなと思います。
また、日々の学習はアプリで完結できることも良かったようです。受講前には、日常業務の中で時間のゆとりがあるわけではないので、やり抜けるのか心配だ、という声も上がっていました。業務の状況によって数日分をまとめて受講していたメンバーもいましたが、その方がまとめて頭に入れられて理解も深まるというメンバーもいました。「いつでもアプリで学べる」「1日10分でいいという手軽さ」「一週間まとめても1時間なら集中してできる」という形で、意外と続けられたと思います。ちゃんと続けられたこと自体が自信になり、あとは他メンバーの進捗が刺激になり、最後まで走り抜けられたポイントにもなったと聞いています。
学習を進めると自由回答欄が設けられていて、他の部署の人や社長・マネージャーがどんな意見を持っているか分かった点も良かったです。他部署のメンバーの意見も読むことができるので、役員やマネージャー陣のmtgで「あの部署からこんな意見が出ていたね」と社内で議論するきっかけにもなりました。
【グロースXの受講者への”受講後の満足度”アンケート結果】
受講後に受講者を対象に行ったアンケートではグロースXの体験に対する満足度が90%以上でした。受講者の研修の効果体感も高かったと思います。
ちなみに、第1陣の受講者はマネジメント層が多かったこともあり、学習した内容を部署内に還元するように依頼していました。マネージャー陣が網羅的に学びつつ、自分たちのチームでは何を自分ゴト化できるだろうか、とまずはメンバーの業務につながる身近な項目を選んで、社内にシェアしてくれていたようです。
伝え方は、部署により様々です。勉強会を開催したり、Slackでクイズ形式で出題して楽しく気軽に学べるようにしたり、月に1回ワークショップをやってその内容について「グロースXクイズ大会」を開催したり、メンバーの性質や求めていることに合わせて工夫してくれていました。知識がつくのももちろんですが、新しいことを学びシェアして共有する、というチームで高めあう学習習慣自体がついてきた感覚はありますね。チームみんなで実践することで、楽しく続けられた、という声も聞いています。
マーケティングを支援する立場だからこそ、全体像の理解が必須
ー他社にグロースXをお勧めできる点をあげるとしたら、何になるでしょうか?
グロースXを受講する前は、こういったマーケティング研修の内容は事業主側寄りなのかなと思っていたのですが、色々なお客様に向き合っている私たちエージェンシーだからこそ、必要なものだと実感しました。多様なお客様の課題にきちんと向き合わなければならない、その課題に気付くには知識やスキルも持っておかなければならない、と改めて気付かされました。知識やスキルを持っておくことで、支援できる領域が変わったり視座が上がったりして、きちんと結果に繋がっていくと分かりました。
ですから、エージェンシーこそが組織全体としてマーケティングのベースの知見を身につけておくことをお勧めしたいですね。BtoB、BtoCいずれのビジネスモデルの場合でも、根本的な構造は同じで視点を切り替えれば必ず役立ちますから、いかに自分ゴト化して取り組めるか、という点は結構ポイントになっていると思います。
ー貴社の今後の取り組みについて、教えてください。
グロースXを導入する際に定めた目標を、より強く・高いクオリティで実現していきたいですね。
研修を始める際、その目的をみんなで共有できるように「マーケティング強化によって実現したいこと」を言語化しました。それがこの3つです。
❶マーケティングの「共通言語」で社内外のコミュニケーションの質を向上
❷自部署以外の領域への理解促進
❸マーケティングを体系的に理解し、顧客の本来の課題を解決
当然ながら全員が同じレベルで落とし込め活用できているわけではないですが、一定以上の共通言語ができてコミュニケーションが円滑になり、自部署以外への理解も進んでいます。グロースXを最後まで学習し尽くすことで、マーケティングの体系的な理解も以前とは違うフェーズでできていると思います。
ここからは、受講したメンバーが学んだことを実践していくこと、受講していないメンバーに知識を浸透させていくこと、また得た知識を元に、一番の目的であるお客様の課題を深堀りし、より密にその課題解決にお力添えしていくことに注力できたらと考えています。私自身も含め、学習すること自体も大切ですが、それを活かしてどう実務を発展させていけるのか、ここからが本当の勝負になるかなと思います。
今回は貴重なお話をありがとうございました!